日本の男は家事をしない。女性の社会進出をすすめるためには、男性の家事分担が必要だ!男どもよ、仕事と生活のバランスをとってもっと積極的に家事をしよう。
とはよく聞く話。
ふと男の家事時間が長くなれば、男性も女性も満足するの?だいたい男性がどのくらい家事分担をすると満足なの?と思ったので調べてみました。
例によって長いので、結論を一言でいうと、「男性の家事分担が30%以上の国はけっこう幸せそう」です。興味がある方は続きをどうぞ。
今日のトピック
日本は世界一「夫が家事をしない国」というけれど、男が家事をする国は幸せなのか?
Newsweek日本版の2016年3月1日の日本は世界一「夫が家事をしない国」という記事の中でおもしろい統計が紹介されていました。それによると
配偶者がいて18歳未満の子がいる男女が家事にかける週間平均時間は、日本の男性が12.0時間、女性は53.7時間となっている。従って、男女の合算に占める男性の割合(家事分担率)は、12.0/65.7(h)=18.3%となる。男性の分担率は、わずか5分の1程度しかない。
33か国のなかで、日本男性の家事負担率(18.3%)は、ぶっちぎりで最下位です。
日本男性が家事をしないというのはよく聞くこと。でもさすがに世界一していないとは思いませんでした。日本男性、世界各国の男性と比べて家事をしていません。
「世界の男性はもっと家事をしている。だから日本男性よもっと家事をしよう!」というのはもっともですが、男性が積極的に家事に参加するとどうなるのでしょう?
男性が家事に参加する→男女ともにワーク・ライフ・バランスがとれる→国民の人生満足度も高い
となるのでしょうか?気になったので少し調べてみました。
もちろん、人生の満足度なんて人それぞれ。国の経済状態、安全性、住宅状況、貧富の差になど様々な要因によるものです。
家事分担率はその中の一つの要因にすぎないことは百も承知の上で、他の要因はさておき、単純に家事分担率と人生満足度を比べました。
使用したデータについての説明
経済協力開発機構(OECD)のデータを使ってすべてのグラフを作成しました。
行動時間の各国統計はBalancing paid work, unpaid work and leisureのデータです。
先のNewsweek日本版では、18歳以下の子供がいる家庭の家事分担時間ですが、OECDのデータは、各国の15歳から64歳の男女を対象とした実際の無償労働時間の平均値です。
ここで無償労働に含まれるのは、一般的な日常の家事労働、買い物、子どもなどのお世話、ボランティア時間なので、これを家事の時間としました。
各国のワーク・ライフ・バランス指数、人生満足度指数は、OECDのBetter Life Indexの指数を使っています。
ワーク・ライフ・バランス(Work Life Balance)と人生満足度(Life Satisfaction)です。
各指数は、10から0で評価され、数字が大きいほどワーク・ライフ・バランスがとれている、または人生満足度が高いことを示しています。
これらのデータから、行動時間と各指数の両方のデータがそろっている26か国の数値をもとにグラフを作成しました。
家事分担比率の計算は、Newsweek日本版と同じ計算式です。
男性の家事分担比率=男性の平均家事時間/(男性の平均家事時間+女性の平均家事時間)です。
男性の家事分担率の高い国はワーク・ライフ・バランスがいいの?
男性の家事分担比率とワーク・ライフ・バランスの関係をてみます。
男性の家事分担率を水色、女性の家事分担率ピンクであらわしています。男性の家事分担率の高い国から、左から順番に並べました。
上位5カ国と下位5カ国をそれぞれ囲っています。茶色の線は、ワーク・ライフ・バランス指標です。指数が高いほど、ワーク・ライフ・バランスがとれています。
点線は、ワーク・ライフ・バランス指標の中間値7.4です。点線より上は、ワーク・ライフ・バランスがとれている上位半数の国、点線よりしたは下位半数の国です。
日本男性の家事分担比率は、このグラフではなんとなんと17%で下から2番目です!!男性全体でみると世界一じゃないかも。
ちなみに最下位は16.5%の韓国でした。なのでほとんど差がないですね。
男性の家事負担率が世界一高い国はノルウェーで43%!
男性の家事分担率の高いトップ5の国のワーク・ライフ・バランスをみると上位国に入っています。
逆に男性の家事分担率が低い5か国の男性の家事分担率(%)とワーク・ライフ・バランスをみると、トルコ(24%、0)、メキシコ(23%、2.1)、ポルトガル(23%、6.7)、日本(17%、5.1)、韓国(16.5%、5.0)。
軒並みワーク・ライフ・バランスはそろって点線よりも低く、下位半数に入っています。
その他の国では、はっきりと男性の家事分担率が高いほどワーク・ライフ・バランスがとれているという関係は見られません。
ワーク・ライフ・バランスは労働時間+価値観による
例えば私の住んでいるアメリカは男性の家事分担率は8位の38%ですが、ワーク・ライフ・バランスは5.3と日本の次に低い値です。
アメリカ以外の家事分担は高い(上位半数)けれどワーク・ライフ・バランス指数の低い国は、カナダ、スロベニア、オーストラリアです。スロベニア以外は英語圏の国ですね。
これらの国の長時間労働者(週に50時間以上働く人)の割合をOECDのデータでみると、カナダ 3.8%、アメリカ 12%、スロベニア 5.5%、オートラリア 13%、です。
OECDの長時間労働者の平均は13%です。男性が家事分担をある程度している国のワーク・ライフ・バランスが悪いのは、長時間労働のためではなさそうです。
ここで同僚のアメリカ人男性が愚痴っていたのを思い出しました。
「8時から5時、週5日の40時間でも拘束される時間が長すぎる!給料にみあっていないよ。」と。
おそらく、アメリカに限って言えば、やりたいことが多すぎて時間が足らない、40時間でも仕事時間が長いよ!と感じているので、ワーク・ライフ・バランスの値が低くなっているのかなと思います。
同じ環境で日本人が働いたら、おそらくワーク・ライフ・バランスとれてるじゃんとなりそう。(私と夫がそうです。夫の場合、40時間では仕事時間が足らないらしい)
長時間労働者が20%以上いる国はヤバイんじゃ?
一方、男性の家事分担率が低い5か国の長時間労働者の割合をみると、トルコ39.3%、メキシコ 28.3%、ポルトガル 9.8%、日本 22%、韓国 23%です。
ポルトガルを除いては、OECDの長時間労働者の平均13%よりもかなり高い。全体でみても20%を超えているのは、トルコ、メキシコ、日本、韓国だけです。
長時間労働をしている→家事をする時間もない=ワーク・ライフ・バランスが取れない
とくに長時間労働者が20%を超えている国は、この傾向がはっきりみえる。
日本については、いまさら言われなくても分かってますから!という感じですが、他の国のデータと比べるとそのバランスの悪さが目立ちます。
男性の家事分担率とワーク・ライフ・バランスのグラフからわかること
- 男性の家事分担率が高い5か国はワーク・ライフ・バランスがとれている
- 男性の家事分担率が高いほど、ワーク・ライフ・バランスがとれているわけではない
- 男性の家事分担率が低い国は、ワーク・ライフ・バランスが悪くなりがち
さらに個人的な印象を加えると、
ワーク・ライフ・バランスは、単純に仕事時間 vs 家事時間のバランスではなく、仕事時間+家事時間(有償・無償の労働時間) vs レジャーや家族・友人との時間だと思います。
アメリカのように男性の家事分担が進んでいる国でも、レジャーや家族との時間が十分でなければ、ワーク・ライフ・バランスがとれていないと感じるようです。
男性の家事分担率の高い国は人生満足度が高いのか?
今度は、男性の家事分担率と人生の満足度指数の関係をみてみます。
先ほどの男女の家事分担率のグラフに、ワーク・ライフ・バランス指数の変わりに人生の満足度指数を重ねました。
点線は、人生満足度の中間値7.8です。日本の人生満足度は4.2です。
男性の家事分担比率が高い国トップ5は、エストニアを除いて人生満足度もかなり高い。
一方、日本を含む最下位5カ国をみると、そろって満足度がかなり低い。男性の家事分担率が下から6番目のイタリアも満足度が低いです。
一方で男性の家事分担率は高いけれど、人生の満足度が低い国もあります。とくにエストニア(2.9)、スロベニア(3.4)、ポーランド(3.6)、ハンガリー(0.6)は、日本の満足度(4.2)よりもかなり低い。
これらの国では、家事分担よりももっと切実な理由があり人生満足度が低くなっているように思います。
また、男性が家事をしているにもかかわらずワーク・ライフ・バランスの低かった国、カナダ、アメリカ、オーストラリアの人生満足度は高いです。
アメリカ人は忙しいけれど、充実した人生という感じでしょうか。
男性の家事分担率と人生満足度のグラフからわかること
- 男性の家事分担率が高いほど人生の満足度が上がるというわけではない
- 男性の家事分担率が高くても、そのほかの理由があり人生満足度が低い国もある
- 男性の家事分担率が低い国は、人生満足度も低くなりがち
- 欧米の主要国では、男性がある一定以上の家事分担をしている国は、人生満足度がそこそこ高い
“ある一定以上の家事分担”の目安は、人生満足度が上位半数の国で男性の家事分担率が一番低いアイルランド。
このアイルランドの男性の家事分担率30%が家事分担率の最低ラインの目安になると思います。
そうはいっても、現実的にこれ以上家事をする時間はないよ!いったいどれだけ家事をすればいいんだよ!という男性の声も聞こえそうです。
では世界の男性たちはどのくらいの時間を家事につかっているのでしょうか?
男性の家事分担率が高い国は、いったいどのくらい家事をしているの?
男性と女性の実際の1週間の家事時間と人生満足度の関係をみてみます。
男性の週間家事時間を水色、女性の週間家事時間をピンクであらわしています。男性の家事時間が長い国から順番に並べました。点線は人生満足度の中間値7.8です。
先ほどのグラフで男性の家事分担率が高かったトップ5の国を赤で囲っています。家事分担率が高い国は、実際の家事をしている時間も長い傾向です。
男性の家事分担率最下位6カ国は、実際の家事時間もそろって最下位グループでした。
日本は家事全体にかける時間が長いので、男性の家事分担率が低くなりがちなのかと思いきや、そうでもありません。
このデータを見る限り日本の家事労働時間(男性7.2hと女性34.9hの合計)は42.1時間と、全体から見たら短いほうです。(26カ国の平均合計家事時間47.8h)
満足度が上位半数の国で男性の家事労働時間が一番短いアイルランドでは、男性の週間家事時間は15.1時間、アメリカで17.3時間、一番長いデンマークは21.7時間です。
今回のデータは、16歳から64歳までの男女の家事時間をもとにしています。全体の平均値なので、独身者も既婚者も含めた数値です。
これだと、子どもがいる場合の夫の家事分担がどのくらいかわかりません。
私が気になるのは、子どもがいる家庭での夫の家事分担はどのくらいがいいのか?という話。
この先はNewsweek日本版の2016年3月1日の日本は世界一「夫が家事をしない国」からデータを引用したいと思います。
いったい日本の夫は家事をどのくらいすればいいの?
では日本男性の場合、どのくらい家事をするとそこそこやっているよね!という感じになるのでしょうか。特に18歳未満の子どもがいる家庭の家事分担をみてみます。
それによると、欧米の主要国の男性の家事分担率は30%以上。一番家事分担をしているスウェーデンで42.7%です。
家事分担比率に関していえば、OECDのデータとNewsweek日本版のデータに大きな差はないようなので、目標の家事分担率を30%とします。
Newsweek日本版のデータによると、日本の男性の1週間の家事時間は12時間、女性の家事時間は53.7時間で合計65.7時間。
かりに日本の男性が30%家事を分担すると、19.7時間になります。
実際に週20時間の家事をするには、平日は2時間×5日で10時間。土日にそれぞれ5時間ずつの合計10時間。
こうしてみると20時間の家事は、毎日8時9時に帰宅していたらかなり大変そう。そもそも、うちでは65.7時間も家事をやってない。
家事にかける時間は各家庭によります。やはり実際の分担時間を考えるには、家庭での家事時間の30%を目安にして計算しないと意味ないですね。
ずぼらなわが家の家事時間は週に48時間です。
その30%というと、14.4時間です。そうすると、平日1.5時間×5日、土日は3時間半ずつですみます。これなら、現実的にできそうです。
男性の家事時間が2.5倍増えるまで20年かかる
ちなみに別のデータですが、アメリカでは、1965年の男性の家事時間は4時間、女性32時間だったのが、1985年では、女性20時間、男性10時間になっています。(Men vs. women: How much time spent on kids, job, chores? USA Todayより)
男性の家事時間が2.5倍になるのに実に20年かかっています。
アラフォーの私の同年代の男性は、夫も含め比較的家事をしているように思います。団塊の世代の父親よりも家事をする男性ははるかに増えている。
このままいくと次の世代では、男性の家事分担率30%も実現しているかなと、少し楽観的な期待をもっています。
世界の家事分担のまとめ
日本は世界一夫が家事をしない国というのは、本当でした。しかも、男性が家事をしない国は、総じてワーク・ライフ・バランスが悪く、人生満足度も低い。なんだか生きづらい国に見えます。
今回分かったことは、
- 男性が家事をする国、言い換えれば男性が家事をする時間がある国は、総じて人生満足度が高い
- ただ満足度とワーク・ライフ・バランスは必ずしも相関しない
- 男性の家事分担率が30%を超えている国の多くは人生満足度が高い
です。
どうやら、
男性が家事に参加する→男女ともにワーク・ライフ・バランスがとれる→国民の人生満足度も高い
というよりも
男性が家事に参加できない・しない→ワーク・ライフ・バランスが悪い→国民の人生満足度が低い
という。
男性が家事に参加すればするほど人生の満足度が上がるわけではなく、あるていど(30%ぐらい)家事に参加していれば、家事分担としてはよさそうです。
人生満足度は、家事分担率以外の要因も多くあります。人生をどう過ごすかは、その人の時間の使い方しだい。
ナースに聞いた「死ぬ前に語られる後悔」トップ5のうちのひとつに、「あんなに一生懸命働かなくてもよかった」という言葉があることを思い出しました。
仕事がはやく終わって時間ができたら家事をするではなく、家事&家族と一緒にすごす時間のために仕事を切り上げる。家事の時間を最初から日々の生活に入れておく。
そういう気持ちの切り替え、時間の使い方をする人が増えると、社会の雰囲気も変わるかなと思います。
男性が家事を手伝い、家族で過ごす時間が増え、「あんなに一生懸命働かなくてもよかった」という後悔をする人が一人でも減ってほしいものです。
「家族との時間を作るために、家事を効率化する」そう思って、家事の手抜き、いえ効率化ですね、を進めようと思います。
統計の数字は社会の傾向をみるには面白いですが、あくまでの全体の話で実生活にはあまり関係ありません。
次は我が家の家事分担を分析しつつ、各家庭レベルでの家事分担について考えてみたいと思います。
では、今日はここまで。
HAVE A GOOD DAY!
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