アメリカの産休や育児休暇、女性の職場進出がすすんでいるからさぞ充実しているだろうと思ったら、日本の制度の方がよほど充実していました。
出産を控え、今後の育児と仕事について考えることが多くなりました。
私自身、出産後6か月で仕事を始めようと考えているので、アメリカでの育児とキャリアの両立についての現状を調べてみました。
今日のトピック
アメリカの産休・育児休暇のしくみ
渡米するまで、いやアメリカで妊娠するまでは漠然とアメリカの方が出産後は働きやすいとおもっていました。
アメリカのキャリアウーマンにはこんなイメージをもっていました。
- アメリカの方が女性が育児と仕事を両立しやすい制度が整っている。
- アメリカ女性はキャリア志向が高くバイタリティがあるため、産休や育休が短くてもすぐに職場に復帰したい。
- また、アメリカ人女性の多くは、キャリア志向が高く、専業主婦は珍しく立場がない。
これらは、大いなる幻想でした。
いい意味でも悪い意味でも、個人主義が徹底しているアメリカ。政府の援助や制度だけを比べたら、日本の方がよほど充実しています。
アメリカには基本的に有給の産休や育休制度がない!
アメリカでは、1年以上の働いていれば、家族が病気の際に12週間ほど休職できる制度があり、これを産休や育休に充てることができます。
出産前と出産後あわせて12週間です。
この期間は、職のポジションが保証されているだけで、基本的にはこの間のお給料は支払われません。
ただし、大きな会社であればお給料がでたり、カリフォルニアなど州によっては、有給の場合もあります。
そのため出産直前まで働き、産後すぐに復職せざる得ない環境です。長くても3か月後には復職することになります。
私の会社の同僚も、出産前日や2日前などギリギリまで働き、出産後にできるだけ多くといっても3ヶ月ですが休んでから復帰するひとがほとんどです。
なにも好きで産後すぐに復職しているわけではなく、そもそも1年もの産休がとれる日本とは状況が全く違います。
もちろん出産後の時短勤務の制度はありません。
会社によっては、交渉次第で数週間は時短勤務も可能なようですが、あくまでも個人交渉というところがアメリカらしいです。
妊娠健診・出産費や育児に対する補助もなし!
また、妊娠中の健診や新生児の医療費なども、政府や自治体から補助があるわけではなく、全ては個人が加入している保険次第です。
出産費用がすべてカバーされる保険から、我が家のように年間の医療費(出産費用以外も含め)が、ある一定金額になれば、それ以上は全て保険でカバーされるという保険まで、いろいろです。
当然、子供手当などありませんし、保育園は私立で当然補助などまったくないです。
乳児を一人預けると、1か月、$1,000-$1,500(10万から15万円)ぐらいのデイケア代(保育園)が普通です。
個人で行っている託児所の場合、もう少し安く5万円ぐらいかもしれませんが。
そのかわり、待機児童はほとんどいません。
人気のあるデイケアの場合は、空席待ちになる場合もありますが、たいていはどこかのデイケアに預けることができます。
デイケアも自分の好きなところに好きな時から預けることができるので、職場の近くや家の近くなど自由に選べます。
私は仕事が決まってから保育園を決めました。保育園を見学して、1週間後には仕事が始まり、息子も保育園に通い始めました。
産休が短くても働くアメリカの女性たち
アメリカの共働き家庭は60%
私のまわりのアメリカ人女性で専業主婦をしている方は、主人の同僚の奥さん一人と、1歳の乳児がおり退職して学校に通っている人ぐらいで、その他はパートにしろフルタイムにしろ仕事をしている女性ばかりです。
専業主婦の方と出会う機会もないので、偏っているかもしれませんが、アメリカ人女性のほとんどが働いているという印象です。
統計をみると、アメリカの18歳未満の子供がいる家庭のうち、夫婦共働き世帯は59%。
子供の年齢でみると、6-17歳の子供がいる家庭の共働き世帯は、62.4%、6歳未満の子供がいる家庭では、54.6%となっています。
- 【参考】United State Department of Laborの2011-2012年の統計です。http://www.bls.gov/news.release/famee.t04.htm
一方日本では、2012年の総務省の統計によると、共働き世帯は35.8%です。年々増加傾向にあるとはいえ、まだ半数以下です。子供がいる家庭だけで見ると、多少は変わるかもしれません。
- 【参考】なるほど統計学園高等部 http://www.stat.go.jp/koukou/cases/cat4/fact4.htm
働かざるえない環境のアメリカ女性
50歳以上の女性達は、ウーマンリブ、男女平等、雇用機会均等、女性の社会進出などの第一世代として、働くこと=自己実現という感じで、キャリア志向の強い方が多いのですが、その後の世代になると、致し方なく働いている人が多くなる印象です。
夫の給料だけでは家計がまわらないためだったり、リストラ対策のために夫婦で働いているという状況をよく目にします。
夫がしばらく無職だったのよとか、今現在求職中だけどなかなか仕事が見つからないとか、夫と妻ともにパートタイムの仕事しか見つからないとかもよく聞く話。
また、離婚率が高いというのも影響があると思います。
これはネガティブな意見になりますが、「働いているアメリカ人女性が多いのは、働きやすい社会制度が整っているからではなく、働かざる得ない環境に置かれているからではないかと」思い始めました。
夫の働く環境&育児参加の違い
アメリカでは、働く女性を応援するような制度は不十分ですが、かわりに男性の勤務時間が短く家に早く帰ることができます。
普通は残業もないですし、8時5時で働くのが一般的。
日本のように、夜9時、10時まで仕事、さらに付き合いで飲んで帰って午前様というのは、アメリカでは一般的ではありません。
仕事によりますが、比較的出社時間と退社時間に融通がきくので、男性がデイケアに子供を迎えに行くこともよくあります。
全てのアメリカ人男性が家庭的ではないですが、男性が家族に使う時間が日本よりも多いような気がします。
また男性が子供のために仕事を休む、早退することに、本人もまわりも抵抗を感じない雰囲気があります。
働かざるえないとはいえ、現実問題として育児と仕事をなんとか両立できるのは、社会制度の充実云々というよりもむしろ、こういった男性の働く環境と意識の違いによるところが大きいのではないででしょうか。
いっそのこと日本では子供が3歳になるまでは夫の残業禁止ぐらいした方がよいんじゃないかと思います。
仕事から帰って、夕飯の支度、お風呂、寝かしつけ、これを夫婦の共同作業としないでイクメンと名乗らないでほしいものです。
私の夫は、出社時間、退社時間は融通が利くうえ、自宅勤務やリモートで会議への出席をしたりと、働き方にかなり融通が利く方だと思います。
そのため、私自身も出産後に仕事に復帰しようと思えるのでありがたいです。
アメリカでも日本でも、キャリアウーマンの悩みは同じ
バリキャリというわけではなく、野心的ではないキャリアウーマンであれば、仕事と育児の両立はそれなりに頑張ればできそうな気がします。
ただし、バリキャリとよばれるような管理職のポジションなどにつくような女性や上昇志向の高い女性達は、キャリアと育児の両立について日米問わず同じような葛藤があるようです。
詳しくは、日本経済新聞の仕事と子育ての「両立」は米国でも容易でない (2013年6月18日)という記事、さらにその中で紹介されているThe Atlanticの記事Why Women Still Can’t Have It Allを読むと現実の厳しさがわかります。
The Atlanticの記事の中で、著者のスローターさんは、
「努力しさえすれば女性でもキャリアも家庭も手に入る」という、今まで繰り返し主張されてきたことは現実的ではなく、これを実現できるのは限られた一部の女性達だけである。
とはっきりと言われています。
また、女性は、常に上昇することだけがキャリアではなく、時に平行移動であったり、場合によっては多少の後退であったり、ライフステージに合わせて多様なキャリア構築を考える必要があると指摘されています。
この点、大いに賛成!
できる可能性の少ないことを、努力次第で誰にでも可能なことだと言われるよりも、最初から非常に難しいことだと正直に言ってもらった方が、よほど覚悟も準備もできるし、その他の道を考える余裕も生まれる。
また、上に向かうだけがキャリア構築ではないということも、時として勇気ある撤退ではないですが、自分の価値観にあわせてキャリアを選択することは、ワーク・ライフマネージメントの重要なポイントです。
出産後の女性の働き方のまとめ
出産後のはたらきやすさ、制度的な面からみたら日本の社会は悪くないと思います。
ただし保育園の待機児童の問題は、高い保育園費を自腹で払うアメリカがよいのか、保育園費は安いけれど入園が難しい日本がよいのかわかりません。
安い保育園にみなが入れれば一番良いのでしょうが。どっちが良いかといえば自由のきくアメリカ式の方が好みです。
多くの女性が家庭と仕事の両立が大変というのは日米変わりません。ただ、アメリカの方が
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- 働き方やキャリアの選び方が色々あり仕事復帰をしやすい。
- 男性の残業が少なく育児をするのは当たり前なので日々の負担が少ない。
- 働くママが多いので、社内の理解がある
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こういった制度以外のことから、出産後はアメリカの方が働きやすいと思います。
制度よりも社会的文化の違い、男性の働き方、家事育児参加の違いが、出産後の働きやすさの違いになっています。
いっそのこと共働き夫婦は、子供が3歳になるまでは夫の残業禁止にしてほしいものです。
おまけ 私のこと
満足のいく家庭もキャリアも自分自身の価値観次第。
私のように、ある程度の給料がもらえる仕事につければ満足というタイプから、頂上まで登りたいタイプと人それぞれなので、自分の価値観にあったキャリア選択ができれば、幸せだなと思います。
私自身、子供の教育費のため、老後のために出産後は働いた方がよい状況です。
また、もともと働くことが好きだからというのと、アラフォーの今数年のブランクを空けると仕事に戻るタイミングを失いそうだからという恐怖もあります。
それでも、子供の成長を身近で見たいという気持ちももちろんですし、幼いうちからデイケアに預けたら、日本語ができなくなるのではとの心配もあり、仕事をすることを躊躇していました。
ただ、今は働く方向で考えています。
アメリカであれ日本であれ、育児と仕事の両立は決して楽なことではない現実が見えてきました。
それでも、多くのアメリカ人、日本人女性がしていることなので、私にもできなくはないだろうと思っています。やってみてから、どうしてもうまくいかない場合は、また考えればいいだけですし。
育児と仕事、ワークライフマネジメントは、今後の課題の一つになりますね。
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共働き家庭の家事分担って大切ですよね。我が家もいいときと、悪いときといろいろあります。
では、また!
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