「アメリカ企業の理系研究職で働いています!」
と聞くと、どういう経歴を想像しますか?
日本の大学か大学院をでて、アメリカの大学院で博士をとった?
日本で博士をとってアメリカにポスドクとして研究留学、それからアメリカ企業に就職。論文もたくさん出してとか?
どちらも違います。
私は博士を持っていません。論文ゼロ、研究実績ありません。
アメリカの大学院にも行っていません。
日本で修士、博士課程は単位取得退学です。
それでもアメリカのグローバル企業で研究員として働いてます。
この記事では、大学院で一生懸命研究をしながらでも将来に漠然と不安を感じていたあの頃の自分に
「世界はもっと広いよ。今やっている研究は無駄にならないよ。もっと自信をもって海外にでてごらん」
と伝えたくて書きました。大学院生の頃に知っていたら人生変わったと思う9つのことです。
ちなみにバイオ系なので、他の分野だと少し事情が違うかもしれません。
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今日のトピック
1.大学院でできるだけ多くの失敗体験をする
失敗が許される学生の間に、出来るかぎり多くの失敗体験をしておく。
日本で大学院生をしていたころは、朝から晩まで毎日、毎日、実験していました。
土日も少なくてもどちらかは研究室に行っていました。今から思えば、よくもまああんなに実験していたものだと思います。
これだけ実験していたのは、実験が下手だったから。
一つの実験に対して考えられる失敗は全部やったと思うぐらい。もちろん失敗するたびにやり直し。
そのうち「どうやったら失敗しなくなるか?」「どういう時に失敗しやすいか?」「実験がうまくいかなかった時に次にどうするか」が分かってきました。
大学院での失敗体験の豊富な蓄積のおかげで、今は失敗しません!となればいいのですが、そんなことはありません。
今でも失敗したり、うまくいかない実験はあります。
ただ失敗実験の豊富な蓄積があると、
- ミスをしない実験のノウハウがある
- 早い段階でミスに気が付く
- ミスを修正する方法が分かる
- うまくいかなかった時に次にどういう実験が必要かわかる
- やり直しか、少しの手直しで実験継続かの判断ができる
- 他の人の実験の小さい間違いにもよく気が付く
といった、ミスを防ぐ方法から、失敗したときの対処、うまくいかない実験へのトラブルシューティングができます。
例えば上司に実験結果を報告してディスカッションするときも「この実験うまくいきませんでした。次どうしましょう?」ではなく「うまくいかなかった原因はこれこれで、次はこういう実験をしたら改善できると思います」と提案できる。
失敗に落ち込まなくても大丈夫。失敗体験、失敗から学ぶことがあなたの本当の財産になります。
2.日本の教育は海外で通用する
日本で受けた教育は海外で働く時も通用します。
海外で働くというと「世界のトップクラスと競争しないといけない。絶対無理!」と勝手に相手を大きくしてビビリがちですが、そんなことありません。
世界のトップクラス級にすごい人は、会社にもめったにいません。大丈夫!みんな普通の人です。
普通に働くなら、日本で受けた教育で十分戦えます。
日本の学位もそのままアメリカで評価されます。日本の修士なら、マスター。博士ならドクターです。
アメリカは学歴社会なので、大学院の学位があるかないかで、就職するときのスタート地点が違います。出身大学は関係なく、どの分野で何の学位をもっているかが重要です。
日本で受けた教育は世界に十分通用します。自分に自信をもって海外に挑戦してください。
3.研究テーマを「マネージメント」する
日々の実験をいきあたりばったりでやっている学生さん、いませんよね??
日本の理系の大学院教育で圧倒的に足らないのは「プロジェクトマネージメント」を学ぶ機会。少なくとも私は学びませんでした。
アメリカの企業では、PhDを持っている人は「プロジェクトマネージメント」を期待されます。つまり、研究テーマと人の両方の管理です。
会社の研究では1つのテーマにプロジェクトとして取り組みます。ある研究テーマにどうやってアプローチするのか?問題点や解決策、新しい方向性の提案、得られる結果の価値などプロジェクト全体の管理。
さらにPhDをもつサイエンティストなら、一人、二人のリサーチャーやテクニシャンとプロジェクトをすすめることが多いです。リサーチャーやテクニシャンの仕事分担や管理もサイエンティストの仕事です。
じつはこれ、日本の博士課程の学生が修士課程の学生の面倒をみながら実験するのと似ています。下に学生がついたら、めんどくさいマネージメントを学ぶ貴重なチャンスです!
研究テーマをプロジェクトとして管理する。後輩の指導は、人のマネージメントの練習として取り組んでください。
4.海外で場数をできるだけ踏む
大学院時代にできるだけ海外に行って、海外を身近にしておく。
- 海外での学会参加
- 交換留学
- 大学院訪問
- 海外インターンシップ
- 留学経験や海外で仕事をしたことのある人との交流
なんでもいいです。とにかく実際に海外に行くこと。人と交流すること。チャンスがあれば片っ端から応募するぐらいがちょうどいいです。
特にビザサポートつきの海外企業のインターンシップ(たいてい夏休み中)は、直接海外就職につながる一番の道です。応募するのはただです。
書類を揃えてインターンシップに応募するだけでもすごくよい経験。ぜひ積極的に応募してください。
私は大学院時代に国際学会参加と1ヶ月の交換留学に行きました。
最初に参加した国際学会のポスター発表では、質問1つには答えられるけどその後のディスカッションは全くお手上げでした。
あまりの英語のできなさに打ちのめされて、この後から英語の勉強を本格的にはじめました。
交換留学では、アメリカの大学のラボの様子とか学生の様子が日本とあまり変わらないというか、やっぱり普通の人が多いというのが分かってよかったです。
早めに海外に行って、自分の英語力を知ること。海外の人も普通の人が多くて「自分も海外でやっていけそう」という感覚を早めに経験して海外を身近に感じてください。
5.質問力をつける
ラボのミーティング、学会、授業で質問していますか?
「するどい質問」や「するどいコメント」なんてめったにできません。最初は「質問をする」練習でもいいです。ちょっとわからないことを聞くだけでいいんです。
質問のハードルは低くてOK。日本語で質問できるときにガンガン質問しましょう。
海外では、ミーティングで沈黙している=「なにも貢献しない人」です。さらに悪くなると「何を考えているのかわからない人」です。
黙っているよりも、なんでもいいので言葉を発した方がマシ。
日本語で質問できない人が、いきなり海外で質問できるようにはなりません。日本語にいる時に「質問力」をつけてください。
6.社会人の基本スキルを身につける
社会人の基本スキルといっても、名刺の渡し方とか、お辞儀の角度とか、飲み会の上座がどことか、エレベーターの中で立つ場所などではありません。
仕事をする、会社で働く時の基本スキルです。
- 時間管理(だらだら長く働くよりメリハリ)
- 整理整頓(データやサンプル、書類全般)
- 基本的なパソコンスキル(メール、パワーポイント、エクセル、ワード)
- コミュニケーション力(報告、連絡、相談)
- 実験記録(ラボノート)
これらは海外、日本関係なく会社で働く時、チームで働く時に必要な基本スキルです。
ラボの先生や先輩から学ぶのは、実験だけではありません。「きちんとしているな」と思う人がいれば、その人の「管理システム」を真似してください。
社会人の最低限必要な基本スキルは大学院生で身につける。できる人の「システム」をパクりましょう。
7.遠慮はいらない「自分を売り込む」
謙虚とか遠慮とかいりません。
私もですが、日本人は遠慮しがちだったり、謙虚すぎる人が多いです。ちょっと言い過ぎかも、大げさすぎるかな?でやっと普通。さらに倍に膨らませてちょうどいいぐらい。
外国人の候補者が1を10に見せているなかで、あなたが5を5で見せても勝ち目がないです。
特にアメリカでは、謙虚であること、遠慮することは、「自信がない」、「能力が足らない」と評価されがちです。
海外で仕事をするなら、ずうずうしいぐらい「自分を売り込む」ことが基本。これでやっと就職できます。
履歴書で「自分の経験や実績を最大限大きく見せる」のも実力のうち。研究内容をより魅力的にプレゼンするも実力のうちです。
自分で自分を売り込まない人は、他の人も売り込んでくれません。まずは、あなたがあなたの一番のセールスマンとして自分を魅力的にPRしましょう。
8.今の研究テーマに縛られない
今の研究テーマだと、どこにも就職する企業がない!
そんなことはありません。
研究テーマがちがっても、「手法や考え方」が使えるものなら、今の研究内容とは違う分野での就職も可能です。
研究できる能力を高めておけば、応用はいくらでもききますから。
頭で学ぶ知識は後からいくらでも勉強できます。実験や研究の体験やスキルの習得の方が時間がかかる。
とは言っても全く違う分野の企業に就職するのはさすがに難しいです。
ビザの関係もあるので、大学でポスドク→永住権取得→企業ポスドク→企業就職というのが一般的です。
将来的にアメリカでアカデミアではなく企業に就職したいなら、大学のポスドクはその先の就職へつながる研究テーマを選ぶ。
私の場合は、大学院は動物バイオ系だったので、アメリカのコミカレ(2年生大学)で園芸学を学んでから植物バイオ系の企業に就職しました。
最終的に行きたい場所へ向かって次の一歩を選んでくださいね。
大学院での研究内容にとらわれて就職先を限定してチャンスを小さくする必要は全くないです。今いる研究室の外にある可能性に気が付いてほしいと思います。
博士を取った後の進路も色々です。できるだけ人にあって話を聞いてみてくださいね。
- ポスドク後・博士課程修了後の問題解決能力を活かす進路の多様性(Luck Is What Happens When Preparation Meets Opportunityより)
9.英語力はできるだけ上げておく
アメリカの会社で働くには、完璧ではないにしろ、会社でコミュニケーションをとって仕事をするだけの英語力は必要です。
英語は今でも苦労しているので、英語力はあればあるだけ良いです。できる時にやれるだけ勉強してください。それでもアメリカにきたら、通用しなくて愕然としますから。
ビジネス英語はオンラインコースで勉強中です。
おまけ.PhDでも研究職だけが進路じゃない
博士になったら研究職しか就職先がないと思っていませんか?
そんなことはありません。
私の同期では、博士を取った後にバイオ系の解析装置や試薬会社のマーケティングや営業。アプリ開発など、研究支援ビジネス側に就職した人も何人かいます。
いままでよく使っていた外資系の装置のメーカーに就職したり。
私も、博士課程を単位取得退学したあとは、商社で営業&マーケティングをしていました。アメリカからゲノム解析装置を輸入して、日本の研究者に販売する仕事です。
研究者がお客さんになるので、研究のバックグランドが役に立ちました。アメリカのベンチャー企業との取引だったので、アメリカにも出張したり。
アメリカのベンチャー企業では、PhDとMBAの両方を持っている人がゴロゴロいます。CEOは特にそう。
理系の大学院を卒業後に、専門知識を活かせるビジネス業界への就職もありです。研究が合わないと思ったら、研究支援ビジネスやベンチャー企業への就職も現実的です。
海外就職を目指す理系大学院生に伝えたいこと
私の場合は、大学院生の時にアメリカ企業で研究職をしようと思っていたわけでなく、流れ着いた場所がここだっただけ。
私は論文を書けずに博士課程を3年して大学院をさりました。博士課程を退学ですね。
論文が書けなかった理由は、国際学会でポスター発表したらデータをコピーされて先に発表されたとか、その後どうしていいのか分からなくて諦めてしまったから。
ようは研究を続けることに嫌気がさした。
ラボには二度と戻らないと心に決めて文系就職しました。
それから派遣社員のテクニシャンとしてラボに戻ったのは12年後です。さらに2年後にフルタイムの研究員になりました。
12年のブランクがあってもアメリカ企業の研究員になれました。
大学院の時から海外就職を目指しているあなたの方が私よりよほどチャンスがあります。
難しいかな?と思っても、やってみると意外にできてしまうもの。ぜひこの記事を読んだあなたには、海外就職にチャレンジしてほしい!
アメリカ就職を考えている人へ
コネ無しでアメリカで就職して働くためにしっておきたい11のことをまとめました。ビザのことから、求人の探し方、実際に働き始めた時の見えないストレスなどです。
今日はここまで。では!
Have a good day!
有賀透子
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