日本の女性活躍促進法のイメージって悪くありませんか?
どこか他人事のような、白々しい感じというか。
少子化で労働力が足らなくなったとたん、たんに頭数を女性に期待されてもねえ。いまさら何言ってるの?です。
男性と同じような働き方をしたいわけじゃないの分かってる?
「女性が働きやすい社会を実現する」のは、女性にとってうれしいことのはずなのに、なにこのネガティブ感。
海外在住とはいえ、もと東京のサラリーウーマン。
日本のトップダウンの女性活躍促進キャンペーンはかなり冷めた目で見ていました。
が、私の働いている会社、アメリカのフォーチュン500にも名を連ねているいわゆるグローバル企業でも、まったく同じようにトップダウンで「女性の活躍促進プロジェクト」が立ち上がりました。
一企業が本気で女性の活躍促進を取り組む?
今までも同じような取り組みは女性中心でボトムアップで行っていたのに、なぜ今さらこんなにプッシュするの?
「管理職のなかの女性の割合を増やすこと」は確かに、社員の男女比を反映してより平等な会社になるのはわかります。
でも、道徳的な理由だけで会社がトップダウンでプロジェクトを組んで取り組むと聞いて、素直に納得できますか?
他に何か理由があるのでは?
それともただの気まぐれか?
社外的なポーズ?
とにかくやっと男性がこの不平等に気がついて、真剣に男女平等になるように動き始めた。よかった、よかった。
なんて素直に受け取るほとナイーブではありません。
会社が大きく動くには、それなりの理由、会社にとっての実益があるはずです。
ヒラリー・クリントンも言っています。
Investing in women is not only the right things to do; it is the smart thing
女性に投資することは、正しいことだけでなく賢明なことだ
なぜ女性に投資することは賢いことなのでしょう?
今日のトピック
多様化が進んでいる会社ほどパフォーマンスがいい
女性の雇用促進や、女性管理職を増やそうという動きは、会社の多様化(ダイバーシティ)を増やす活動のひとつです。
マッキンゼーの2015年のレポート”Diversity Matters“では、女性を増やすなどの会社を多様化しているほど、会社のパフォーマンスがよい会社が多いと報告しています。
このレポートでは、366の会社を調べて、多様化が進んでいる上位4分の1の会社と多様化が進んでいない下位4分の1の会社の業務収益をくらべています。
結果は、人種的な多様化が進んでいる会社の方が、業界平均よりも財務収益がよい会社が35%も多く、女性管理職の割合が多い会社は、業界平均よりも財務収益が良い会社が15%多くなりました。
これで、すっきりしました。
男性のトップが本気になるのは「多様化をすると会社への明らかな見返りが期待できる」から。
グローバル企業が女性の活躍促進をすすめるのは、経営戦略の一つなんですね。
では、なぜ会社が多様化するとパフォーマンスがよくなるのでしょう?
会社が多様化するとパフォーマンスがよくなる理由
マッキンゼーのレポートによると、組織の多様化によるメリットは5つです。
1.多様化することとより優秀な人材を採用できる。
これは、わかりやすいですよね。例えばアメリカで白人男性だけを採用するのと、世界中から優秀な人を採用するのでは、やはり人材のプールが大きいほど優秀な人を採用しやすい。
とくに最先端の技術になると、人種や性別にこだわっていたら優秀な人を採用するのはコストも高く難しいです。
2.カスタマーへの理解が進む(顧客志向)
例えば、女性がよく買う商品であれば、女性の方がよりそのマーケットを理解しやすいです。その時の流行りものだとか、購入を決めるのに大切なことだとか。
同じように、中国人の購買力がたかまれば、中国市場を理解するのに中国人の意見を取り入れない理由はありません。
マーケットの変化をすばやく感じて、新しいニーズをみつけたり、新しい発想ができるのも、そのマーケットの当事者だからこそ。
グローバル企業では、対象としているマーケットの多様性を会社の従業員の構成に反映させることがより重要になっています。
中国市場が伸びれば、社員も中国人を増やす。もちろん管理職にも登用する。そういうことです。
3.会社を多様化することで社員の満足度がアップする
とくにマイノリティ側(女性や外国人)にとって、会社が多様化している方が満足度が高くなります。
例えば、私のアメリカの職場では日本人は私一人ですが、フランス人、中国人、インド人、ロシア人と色々な国の人がいます。
日本人でなくても、他に外国人が一緒に働いているだけで、アメリカ人の中に一人外国人としているよりも、よほど働きやすいし安心感があります。
会社が多様化しているほど、お互いの中の違いを認めあう文化ができ、グループ間の衝突が減る。これは、多数派のアメリカ人にとってもメリットです。
4.意思決定&イノベーションの質がよくなる
難しい問題は、バックグラウンドの違う人を集めたチームで取り組んだほど、よりよい答えを出しやすい。
色々な視点からモノを見たり、お互いに意見を言い合ったりすることで、新しいアイデアやアプローチが生まれやすいです。
白人男性だけで考えたビジネス戦略は、多様化した社会ではもはや通用しない。
いろいろなバックグラウンドの人が集まって考えることで、新しいアイデア、白人男性では気がつかないアイデアが出てくる。こんな感じです。
この場合、重要なのは会社の意思決定をするリーダーも多様化すること。
多様性が意思決定に与える影響は、ハーバードビジネスレビュー”Why Diverse Teams Are Smarter”にまとまって分かりやすく書いてあるので興味のある方は是非どうぞ。
5.会社のイメージアップ
グローバル会社になればなるほど、社会的な責任も増えてきます。
多様性のある会社の方が、社会的にウケがいいです。
グローバル企業が多様化を急ぐ理由のまとめ
グローバル企業が社内の多様化や女性活躍促進をすすめるのは、多様化した世界で勝つための純粋な経営判断です。
これがグローバル企業が、今さら女性活躍促進を急ぐ本音。
アメリカでいうなら、白人男性自信が、白人男性中心の会社では行き詰ると認めた。自分たちの考えだけでは、ここまで多様化した社会には対応できないと自分たちの限界を認めた。
そこで、やっと女性をはじめマイノリティの力を戦力として必要としている。
そんな印象です。
グローバル企業の多様化のひとつとしての女性活躍促進キャンペーンは「女性のままであること」が期待されます。
男性のように、男性と同じように働く女性を増やすわけではない。女性が男性と同一化したら多様化の意味がありません。
女性を単なる数としての労働力ではなく、戦力として期待している。
会社のパフォーマンスを上げたいから、女性を増やしたいという「会社の本音」が分かった方が、道徳的な理由で女性の管理職を増やしましょう!と言われるより説得力もあり信頼できると、わたしは思います。
ちなみに2016年のWomen in business: turning promise into practiceで国別の女性の管理職の割合を調べた結果、トップ3は、ロシア45%、フィリピン39%、リトアニア39%。
下からいくと、最下位は日本7%、その次はドイツの15%、インド16%となっていました。
「女性の雇用促進=会社の競争力アップ」をはっきり理解している日本の経営者や管理職はいったいどのくらいいるのでしょうか?
国から言われたからしぶしぶ女性に席を準備してやる、女性の頭数だけ増やせばいいんだろう。
そんな人もいるかもしれませんね。
この先少子化で人口が減る一方の日本、多様化を受けいれ世界的な競争力をつけることを真剣に考えるリーダーが増えてほしいと思います。
アメリカ就職を考えている人へ
コネ無しでアメリカで就職して働くためにしっておきたい11のことをまとめました。
では、今日はここまで。
Have a good day!
有賀透子
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